バセドウ病・橋本病
甲状腺について
甲状腺は体の臓器の一つです。たまに患者との会話の中で、甲状腺そのものを疾患名のように認識し「甲状腺が悪くなった」というような使い方を耳にすることがあります。甲状腺の病気には甲状腺機能異常(ホルモンの量が多かったり、少なかったりする状態)、甲状腺腫大(甲状腺炎、甲状腺腫瘍)などに分類されます。つまり、甲状腺が悪くなったというだけでは正しく病気を言い表していないことになります。
甲状腺はのど仏(甲状軟骨)の真下に蝶が羽を広げたような形で気管を包みこんでいます。正常の甲状腺は小さく(10-20g)やわらかい臓器なので、よほど注意深く触らないと気付かないものです。そのため、のど仏の下に膨らみを触知できるということは甲状腺の腫大を疑うべきです。
甲状腺は甲状腺ホルモンを産生する臓器です。甲状腺ホルモンはヨードを材料にしており、作用は以下の通りです。
・新陳代謝:体温を適切に調整します。脳、心臓、肝臓の機能を調整します。
・成長や発達を促す:発育期に骨の成長を促す。脳や神経の発達に関係します。
※血液検査項目のFT3、FT4は甲状腺ホルモンを指します。
ここでは、臨床でよく経験する甲状腺機能異常の疾患について説明します。
バセドウ病
甲状腺ホルモンが高くなる病気です。甲状腺細胞表面にTSH受容体があります。この受容体は脳から分泌されるTSHホルモン(甲状腺分泌刺激するホルモン)を受けて甲状腺ホルモンの合成・分泌が行われます。バセドウ病はTSH受容体抗体が作られ、その刺激によって過剰な甲状腺ホルモンが産生されることによって代謝異常を引き起こします。
甲状腺機能亢進症(中毒症)の症状
・手が震える ・動悸がする ・よく食べるのに痩せる ・疲れやすい ・暑がりになる ・発熱 ・汗をよくかく
・眼球突出 ・物が二重に見える(複視) ・瞼が吊り上がる ・甲状腺全体が大きくなる
診断のポイント
① 甲状腺ホルモンが高くなっていることを確認します
➡血液検査:FT3 FT4 TSH
➡臨床所見:上記の甲状腺中毒症状
② 自己免疫疾患の証拠を検索する
➡血液検査:TSH受容体抗体
③ 他の甲状腺中毒症との鑑別
➡甲状腺超音波検査検査、アイソトープ検査など実施、薬歴、妊娠歴などの聞き取りをします。
治療
バセドウ病の治療には甲状腺薬を用いた薬物療法、放射線治療、手術の3通りがあります。日本ではバセドウ病の初診患者の9割が薬物療法を選択します。それぞれの治療法には長所と短所(下の表を参照)があるので、よく説明を受け、理解したうえで治療法の選択をするようにして下さい。
当院の治療について
バセドウを疑ったときは、院内で実施可能な検査を行い診断します。治療については患者自身の希望や臨床的特徴に合わせて一緒に選びます。
薬物治療法を選択した場合は、副作用や治療効果判定のため2週間ごと通院していただきます。病状が安定すれば2~3ヵ月間隔の通院となります。副作用が出現したり、長期にわたり甲状腺ホルモンをコントロールできない場合は、放射線療法、手術などを提案します。
橋本病
甲状腺ホルモンが低くなる病気です。免疫が異常な反応を示し、自分の体の臓器である甲状腺を攻撃してしまうことで生じる病気です。甲状腺に対する自己免疫によりリンパ球が甲状腺内に入り込み塊を作ります。さらに甲状腺内の結合組織が増殖し、甲状腺が固く、腫れた状態を作ってしまいます。甲状腺ホルモン値が正常であれば特に治療する必要はありません。自己免疫疾患は進行性であるので、やがて4~5人に1人くらいの割合で機能低下に陥り治療が必要な状態になります。
甲状腺機能低下症の症状
・顔や手がむくむ ・便秘がちになる ・あまり食べないのに太る ・もの忘れがひどい ・寒がりになる ・低体温 ・皮膚がかさつく ・髪の毛が抜ける
診断のポイント
① 甲状腺が腫大していることを確認します
➡触診
➡画像診断:超音波検査
② 自己免疫疾患の証拠を検索する
➡血液検査:抗甲状腺マイクロゾーム抗体、TPO抗体、抗サイログロブリン抗体
治療
甲状腺ホルモンが正常であれば、特に治療の必要性はありません。甲状腺機能低下が存在する場合は、レボチロキシンナトリウム(合成T4製剤 チラージンS🄬)の内服を行い不足分の甲状腺ホルモンを補充します。
当院の治療について
橋本病を疑ったときは、院内で実施可能な検査で診断します。治療の必要性のない場合でも半年~年一回程度甲状腺ホルモンの検査を行います。一方、治療が必要な場合は合成T4製剤の内服を行います。投与量の調整がついた場合は、通院間隔は数ヶ月毎となります。
ちょっとしたアドバイス
